「家族」が教えてくれるもの(河合隼雄)

『HOLISTIC MAGAZINE 2000』

「家族」が教えてくれるもの

1999年開催「ホリスティック医学シンポジウム大阪」講演より
講師:河合隼雄(国際日本文化センター所長)


 

現代人にとって、「超越性」や「宗教性」へのいちばんの近道は「家族」だと思います。
確かに、農業や漁業をやっていると、世の中は自分の思い通りにいかないということがわかる。
ところが工業は思い通りに行かなければいけないわけです。
医学も、「こうしたらこうなる」とわかっているからやっているわけですね。

現代人は、一定の操作を加えれば、操作に見合う結果が出ることをたくさんやってきましたし、そこには「超越性」はいらない。
しかし、「家族」はそうはいきません。

子どもを自分の思う通りに育てることはできませんし、奥さんを自分の思う通りにしている人は絶対いないと思う。奥さんのほうも、夫が自分の思うようになっていることは絶対ないと思います。

 

現代人が、世の中は自分の思い通りにならない、他の力が働いているということを実感でき、しかもそこから逃げるのではなく、その中で生きていこうと決意する。
世の中は進めば進むほど人間の思い通りになっていくけれども、その中で「超越性」に触れるのは「家族」からだろうと思います。
子どもを育てるのは、その最たるものではないでしょうか。
それを忘れて「上手な子どもの育て方」なんていう本を売る人がいますが、書いている本人も自分の家では絶対できないはずです。

だから、私は「家族」というのは、すごく面白いと思っています。

(HOLISTIC MAGAZINE 2000より)

 


河合 隼雄 かわい はやお

1928年年生まれ。日本の心理学者。教育学博士(京都大学)。京都大学名誉教授、国際日本文化研究センター名誉教授。文化功労者。元文化庁長官。国行政改革会議委員。専門は分析心理学(ユング心理学)、臨床心理学、日本文化。
2007年ご逝去。

著作
『河合隼雄の幸福論』(PHP文庫/2023)
『無意識の構造』(中公新書481/2017)
『こころの処方箋』(新潮文庫/1992)
『河合隼雄のカウンセリング入門』(創元社/1998)
ほか多数。

 


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