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Q&A「食事療法の上手なやり方」

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セルフケアQ&A

体質改善のために玄米菜食に切り替えてみたのですが、私の場合、胃腸に負担がかかり調子が悪くなることがあります。このような体質の場合、あまり食べない方がよいでしょうか。食事療法の上手なやり方について教えて下さい。

■回答者:長谷部茂人先生(長谷部式健康会 代表)
『HOLISTIC NewsLetter Vol.72』(2008)より

 

様々な食事療法から学ぶ

食事のありかた、勧めかたについては、その目的によって幅がとても広い。治療食のように、特定の疾患をターゲットにするものから、環境保護のためのオリジナルカロリーに則った肉食反対運動や土着の文化、宗教思想に基づくものまで、多種のファクターが関与しており、食の普遍的正しさを求めるのは容易でないことをまず申し上げます。

「食事療法の上手な方法」は、自分のためだけという場合と、食事療法を身につけて他人にも指導したいという場合では、覚える内容も違ってきます。といいますのは、万人に適合する絶対的な食事療法というものは存在せず、「私に合う」と「他人に合う」が同じでないことを、まず理解しなければなりません。多くの方が、自分に合っている方法を他人にも勧めます。しかし、自分の体質と同じでない他人が実行して成果が同じとは限らないのです。ご質問の方もおそらくそういった状況ではないかと存じます。

例を挙げて考えてみます。明治時代以降、石塚左玄(1851~1909)や桜沢如一(1893~1966)の流れを組む正食運動、後のマクロビオティック食では、玄米ごはんを中心に副菜には、きんぴらごぼうや鉄火味噌、梅干など、東洋思想でいう陽性な食品が主体となっています。
塩は陽性なので多めに使っても問題ないと考え、火を通す調理が多いので植物油の使い方も多くなる。反対に水分の多いようなもの、たとえば果物や水そのものも陰性、つまり体が冷え虚するものは健康を損ねる元になるので、極力避けるように指導されます。

一方で、マックス・ゲルソン(1881~1959)が開発したゲルソン食事療法では、大量の野菜や果物のジュースを摂取させ、徹底してナトリウム(塩)を排除します。人間の細胞は、カリウム:ナトリウム比でみるとカリウムが優勢になっており、病人には野菜や果物に含まれるカリウムの供給が必要で、あわせてナトリウムの摂取制限を行うことによって細胞内のミネラルバランスが改善され、それが免疫力を高めて病気を回復させるという理論です。
日本でも大正から昭和にかけて、健康法の指導者として名を馳せた西式健康法の創始者である西勝造(1884~1959)は、野菜の生食を食事の基本としました。その理由として、「人間だけが異常に病気になるのは、食物を加熱調理することによって、含まれるビタミンや酵素を破壊するからである」という主張でした。

桜沢式のマクロビオティックで病気を治したという人は多い。また、ゲルソン療法でがんを治した、西式健康法で難病を治したという人もたくさんおられる。ところがご覧のように、桜沢式の食養法とゲルソン療法や西式健康法それぞれの理論は全く正反対です。
「陽性なもの、塩はよい。陰性なもの、水分や果物は極力摂るな」という教えと、「ナトリウム(塩)は極力制限して、カリウム(野菜や果物など)を山ほど食べる」という正反対の教えが同時に存在していて、しかもそれぞれが受益者、成果も多い。

私のところに来る相談者の中にも、マクロビオティック食を続けていて、最初はよかったが数年たった今、具合が悪くなったという人、同じく西式で病気は一旦治ったのだが、最近いくら実行してもすこぶる体調が悪いという人がいます。長年続けた健康法で体質的な偏りができてしまったのでしょう。このような場合、それぞれの体質が違う以上、食事指導の内容は同じにはならないのです。

玄米食について

さて玄米食についてです。古来より日本人は米を主食としてきました。奈良時代の日本人の平均身長は、男性で163cm(出展:「縄文時代から現代に至る関東地方人身長の変化」北里大学・平本嘉助)であったという。明治初期の平均が155cmといわれるので、奈良時代は随分身長が高く、従って栄養状態にも優れていたと考えるべきです。当時、一人当たり米の一日摂取量は、遺跡に残る便の堆積物から換算して559グラムだったという数字がある。現代人のそれが160グラムといわれるので、奈良時代は3.5倍も米を食べていたことになる。
その時代の米は、原始的な方法で籾殻をはずしていたので、きれいな玄米ではなく、分搗き米であったと考えられています。現在のような玄米に挽けるようになったのは、江戸時代元禄期に中国から唐臼が輸入されるようになってから以降のことです。なお、その唐臼の第一の利用目的は、籾摺り時にできる砕け米の発生を抑えることにありました。実際、江戸後期では玄米ではなく精白した米、つまり白米へと向かうのでした。

今や玄米食は、健康食のトレンドのように評価する人が増えました。しかし歴史に振り返ると、今でいう純粋な玄米食は、近代以降の特異な目的をもつ人たちによってのみ支持されたというのも事実です。治療食のように目的が明らかな場合の玄米食は別として、健康を気遣う程度であれば胚芽を残した胚芽米や、麦や雑穀を加えた米飯でもよいと思います。実際それで調子のよい方はたくさんおられます。

美味しい感覚も大切に

そして重要なことは、自分に合っているか否かです。人間は食物に対しては、すべてからだが欲するおいしさという感覚を持ちます。からだがおいしいと感じている食物は、からだのエネルギーと同調するように元気を与えてくれますし、実際食べても自然なおいしさを感じるはずです。(但し、最初はおいしかったが、最近おいしくなくなったというときは要注意。そのようなときは、一旦休止すべきです。)

玄米食の良さは、「良く噛んで食べる」「過食、偏食しなくなる」「菜食中心のメニューになる」「人工調味料や添加物の多い加工食品が減る」「外食が少なくなる」「便通が良くなる」、あわせますと「食の大切さやありがたさを認識して、食行動に気をつけるようになる」ことです。これらのことが実行できるのであれば、先にも申し上げましたが玄米食にこだわる必要はありません。

 

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